

今あなたの口の中を鏡で覗いてみてください。
前歯の真ん中から数えて6番目、後ろから数えて2番目、第一大臼歯という歯はありますか?もうすでに抜歯してブリッジが入っていませんか?
また抜歯していないまでも、虫歯になり治療を受け詰め物をしていないですか。もしくは神経を取って被せ物をしてないですか?
この第一大臼歯は別名「6歳臼歯」と呼ばれています。6歳の頃に生えてくる大人の歯だからです。6歳というとまだ自分では上手に歯磨きができない年齢です。そのような時期に奥のほうに生えてくる永久歯は、お父さん、お母さんがしっかりとした、虫歯予防の考えを持っていないと簡単に虫歯になってしまいます。ですからこの歯は最初に治療を受けることの多い永久歯となってしまうのです。
最初は小さな虫歯ができ治療を受けますが、その後、何年かして2次カリエス(詰め物の境目から虫歯になる)になり再治療するため、詰める範囲が大きくなります。さらにその後また虫歯になり、今度は神経を取る治療をして冠を被せます。数年してまたそれが脱離、もしくは歯根破折、最後には抜歯になってしまいます。
修復を受けた歯がその後何らかの問題を起こすまでの平均年数
| インレー(銀色の詰め物) | クラウン(銀色の被せもの) | |
|---|---|---|
| 年数 | 約5年程度 |
約5年程度 |
| 形状 | ![]() |
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抜歯となり無くなってしまった1本の歯を補うために、両脇の健康な歯を削り「ブリッジ」という形で橋渡しをした金属を被せます。その時の土台となる両脇の歯は削ることによるダメージを受けるだけでなく、失ってしまった第一大臼歯にかかる噛み合わせの力も負担しなければならなくなります。
第一大臼歯にかかる力は、やわらかい食事の場合1kgにも達しませんが、歯ぎしりや、くいしばりの時は体重の2倍以上の力がかかるといわれています。体重50kgの人の場合100kg以上の力がかかっているのです。
ということは、すでに失っている第一大臼歯の時よりもさらに悪い条件であることがおわかりいただけると思います。
ブリッジを装着後何らかの問題を起こすまでの平均年数
| ブリッジ(金属で橋渡しをしたもの) | |
|---|---|
| 年数 | 約7年半程度 |
| 形状 | ![]() |
それではそのブリッジがなくなってしまったらどうなるのでしょうか?
土台の歯がダメになってしまえば、3本分が無くなるわけですから、そうなってしまうとブリッジでの修復はできなくなり、「取り外しの入れ歯」になってします。
入れ歯に関しては次のようなデータがあります。
新しく入れ歯を作っても何らかの理由により30%の患者様が入れ歯を入れなくなる平均年数は3年。
同様に50%の患者様が入れ歯を使わなくなる平均年数は5年。
部分入れ歯を入れたことにより、入れ歯をかけている歯(天然歯の場合)の虫歯の発生率は4年で93%。虫歯だけではなく無理な力もかかることにより、歯周病のリスクにもさらされることになるのです。
歯科医師が治療することにより、その歯の寿命がどんどん短くなってしまうのです。
虫歯の治療は絶対に必要です。しかし歯科医院で治療を受けることで、あなたの歯の寿命が短くなる可能性があるという矛盾した結果が、入れ歯やブリッジの治療では毎日起こっているのです。
部分入れ歯を装着後何らかの問題を起こすまでの平均年数
| 部分入れ歯(金属のバネのついた入れ歯) | |
|---|---|
| 年数 | 約4年程度 |
| 形状 | ![]() |
このように、歯をたった1本失う(欠損する)ことから、まるでドミノが倒れるように歯を失っていくことを「欠損ドミノ」と言います。この欠損ドミノを防ぐためには、第一大臼歯を守ることがとても重要になります。
虫歯も歯周病も防ぐことができる病気ですから、予防の意識をしっかり持ち、この怖い流れをシャットダウンしましょう。


しかも、入れ歯を入れた後に起こることがあります。それが「顎堤の吸収」です。
顎堤の吸収とは、入れ歯を入れて噛んだときの圧力によって顎の骨がやせ細っていくことです。ただ入れ歯を入れて噛んでいるだけで起こるのです。
どのくらい吸収するのかというと、1年間で約0.5mmも吸収するのです。
このことからも、入れ歯が合わなくなってしまうのは当たり前のとこと言えるでしょう。

これまで虫歯が原因で歯を失っていくお話をしましたが、実際にはこれに歯周病が絡んできます。
患者様でよくいらっしゃるのが、
「わたしは、昔から歯が良くて歯医者に見てもらったことがないんだ。でも最近、奥歯に力が入らなくて強く噛めないんだよね。」
という方です。
確かにお口の中を診てみると、虫歯はなく、また治療した痕もありません。しかし、歯肉が腫れ、レントゲンを撮ってみると、歯槽骨(歯を支える顎の骨)が歯根の半分以上溶けているような状態になっているのです。それにより歯が揺れだし、周囲の組織に炎症が起こり歯が浮いた状態になり、強く噛めないという症状を起こしていたのです。
お口の中は、歯、歯周組織(歯肉や歯槽骨等、歯の回りで歯を支えている組織)、顎関節などの器官がバランスを取りながら機能しています。そのバランスが崩れた時には、その中の弱いところに問題が起きてきます。
例えば、歯が柔らかければ歯がすり減る、歯周組織が弱ければ歯周病を発症するなどです。もちろん実際には、それぞれ単独で問題を起こすことは稀で、いくつかの問題が同時に起きてくることがほとんどです。
また、これらの変化はバランスが崩れてきたことにより起こると考えられる反面、身体全体を含めて、どこかに無理がかかってきている時に、その力を逃がすために役立っているとも考えられます。ですから、これらの変化がみられる患者様のお口に対して必ず何らかの治療をするとは限らず、経過を見ていくだけの時もあります。


もちろん誰もがこのような経過をたどるわけではありませんが、多くの方が似たような結果になっています。
実際に私が日々の診療の中で観察していても、これらのことは実感できます。最終的には、下の前歯(犬歯を含む6本)が残り、更にその後には下の犬歯だけが残ります。その犬歯でも入れ歯を支えているわけですから、じきに抜歯にいたり、総入れ歯になってしまうのです。
総入れ歯は、「しゃべりにくい」「食べにくい」「ガタつく」「痛くて噛めない」そして何よりも「入れること自体が苦痛」であり、精神的に老けこみます。
このような結果にならないためには、虫歯や歯周病にかからないということです。それには日々のご家庭での適切なケアが必要です。正しい歯ブラシ、食事の取り方等、生活習慣と密接な関係のある疾患ですので、それを知ることはとても大切です。これが予防でありご自身のお口の健康を守るために一番大切なことです。
しかし、すでに虫歯・歯周病になってしまった場合には、
「虫歯に関して言えば、虫歯の部分だけ最小限削って健康な歯質を残す。」
「もしも抜歯になって欠損ができてしまったら、インプラントを入れて噛み合わせを保ち、他の歯に余分な負担を欠けないようにする。」
など、各ステージで最小限の治療で最大の効果(ご自身の歯を守る)を得る治療が必要です。
そしてその後、再び虫歯や歯周病にならないために、やはり予防が必要になってきます。
